これまでの経緯
ICANN が、設立から 10 年、インターネットの一意識別情報システム の グローバル コーディネータとなる という当初のビジョンを達成してきたしたことは広く認識されています。この地位は、
ICANN の利害関係 者コミュニティ による継続的な参加によって支えられ、 1998 年から 2006 年にかけて米国政府と取り交わされた一連の覚書およびその後に取り交わされた合同プロジェクト合意事項(
JPA: Joint Project Agreement )の中で設定された ICANN 策定目標の達成を通して確立されたものです。
大統領直属の戦略委員会 (PSC: President’s Strategy Committee) は、関係諸団体からの意見の聴取、定期的な報告書の発行、および
JPA の期限切れの後も ICANN が引き続きその任務を果すために必要なステップについて専門家の勧告を受けるなど、 2006 年から各種オプションの調査を実施してきました。
JPA 中間評価プロセス1 では、
ICANN が複数の利害関係者からなる民間セクタ主導の組織であり、インターネットの一意識別情報システムをグローバルに調整する責任を負っているということがインターネット
コミュニティによって認識されていることがさらに確認されました。その中で は 、 ICANN がこの役割を果すために必要な最終的なステップが指摘されています。
JPA は 2009 年 9 月に期限切れになります。 PSC は、 JPA 後の ICANN に要求される 諸 条件 を設定し、 関係諸団体に諮問しそれを実施するステップをまとめたこの移行アクション
プランを準備しました。
今後の進路
ICANN は引き続き、信頼の置けるインターネット基幹インフラストラクチャ資源のグローバル コーディネータとして機能します。 ICANN
は、引き続き複数の利害関係者からなる組織として運営され、民間セクタが主導的な役割を果しますが、政府機関からの支援と勧告も含めて、多様な利害関係者コミュニティに情報が公開され参加を可能にします。これによって、究極的には世界中のすべての人々がそのサービスを利用できるように、インターネット普及の範囲を拡大することができます。
ICANN がその任務を果すために必要な主要条件 :
- ICANN は十分な ドメイン名 乗っ取り対策を講じる。
- ICANN は、複数の利害関係コミュニティに対して十分に責任を持つと共に、政策策定に当たり、その影響を受ける利害関係者による下からの政策策定という原則を維持する。関係諸団体によって構築された
ICANN モデルの構造、業務、定款を維持する。 これには定期評価も含める。
- ICANN は、将来のグローバル インターネット コミュニティのニーズを満たすことができるように国際化する。
- ICANN は財政上および運営上の安定と信頼性を確保する。
- ICANN は インターネットの 一意 の識別 情報 に関して安全で安定した運営を行い、 IANA 機能を全うするという技術的使命を遂行する上で、組織および運営の卓越性
を 維持する ことに専心する 。
PSC は、上記の目的を達成する ための イニシアチブ として、以下が適当であると考えています。
ドメイン乗っ取りの再発を防ぐには
- 影響を受ける利害関係者 の幅広い参加を呼びかけることにより、政策策定のための合意を取り付け、圧倒的多数からの要件を確保する。
- 大規模 かつ 多様な支持団体 の動員および協力を確保する。
- 厳しい独占禁止 法 が制定されている 管轄 地域において 存在感を 示す。
- ベスト プラクティスの透明 性 対策を 導入し続ける。
- 単一の団体または関連団体による協議会や支持団体 における 相互参加に制限を 課す 。
- さまざまな管轄 地域 にお いて ICANN の存在感を確立する方法を含め、世界中の関係者が ICANN と の交流を図れるように
参加を促進 する 。
コミュニティに対する ICANN の説明責任を強化するには
- 体系的で明確に定義された新しい提案プロセスに基づいて、コミュニティが理事会に対して 決定を再検討 することを要求できるような メカニズムを導入
する 。
- 特殊な 状況 が発生した場合、コミュニティが理事会 を廃止して置き換えることのできる 臨時 メカニズムを構築 する 。
- ICANN の 構造、再検討委員会、独立審査パネル、オンブズマン といった機能の 定期的 な審査を継続していく。
- 契約順守および 履行 を強化および 拡大する 。
ICANN を国際化するには
- ICANN の歴史的な本拠地 が米国であるとする 会則を調整すると同時に、他の管轄 地域 における ICANN の 法的存在 を確立する
。
- ICANN の付属団体について設定されている目的の達成に最も適した管轄地域に ICANN の付属団体を確立する。
- ICANN が 世界中の インターネット コミュニティのニーズに対応 しやすいように、世界中の地域に必要に応じて ICANN スタッフ
を常駐させ、作業部を設置できるような物理的なロケーションを確保し、発展させていく。
- 通訳および翻訳サービスの提供を含 め 、 ICANN の 多言語化 を推進する。
財務および運営上のセキュリティを確保するには
- 現在の準備金ポリシーを維持し、強化 する 。
- 現在のレジストリおよびレジストラ資金への依存を軽減するために、別の資金源を確保 する 。
- 国際的組織のベスト プラクティスを確実に実現するために、 戦略 計画 、 運営計画 、および予算作成で蓄積した経験に基づいて ICANN
のビジネス プロセスを継続して強化 する 。
安全で安定した運営を維持するには
- プロセスの自動化を通じて IANA の機能の効率と対応を改善するための 提言を行う 。
- Verisign と米国商務省との話し合いの後、 「ルート サーバー管理移行完了契約」を導入 する 。
支援情報
移行アクション プランで 提起された 要素に関する履歴情報、リサーチ アドバイス、背景情報は、「 ICANN における制度信頼性の改善」という付属ドキュメントに記載されています。
以上の状況で提起される 背景 に関する 質問に対する FAQ については、 http://www.icann.org/ja/jpa/iic/faq-ja.htm をご覧ください。
協議に関する トピック と協議 のタイムライン
この文書 で は 、 多数 の基本的 イニシアチブ を 推奨 し ています。それらの多くは、 JPA 中間 評価など、これまで行われた協議
で 提起された ものです。 現在、 移行アクション プランでは、 コミュニティとの詳細な協議において、 次の主要な疑問点 を精査する必要性が重要視されています。
- JPA 以降、説明責任のある、安定した安全でドメイン乗っ取りが不可能な国際的組織となるため、 ICANN に要求される基本的要素が適切かつ十分に特定されているか
?
- 前述の イニシアチブは、目的達成のために十分であるか ?
- コミュニティ と十分な協議を重ね、 会則 の 変更 や その他の導入 ステップを実施するのに十分な時間的余裕はあるか
?
PSC は、 「分析と設計」プロジェクトと「導入」プロジェクトという 2 つの具体的な 作業にプロセスを分割することを推奨しています。まず、「分析と設計」
段階は、 2008 年 の終わりまでに完了する必要があります。 「 導入 」に は 2009 年前半 を費やし、 2009 年 9 月 まで
には完了して評価できるようにする必要があります。
プロジェクト全体を成功に導くには、多様な 関係者コミュニティ と協議を重ね、結果をコミュニティに常時報告することが 不可欠です。 PSC
は、「 分析 と設計」プロジェクトに関する包括的な 協議 プロセスを通じてコミュニティを 参画させていく予定です。 その 主要日程 は次のとおりです。
- 2008 年 6 月 13 日 : PSC 文書 を理事会に提出 。
- 2008 年 6 月 16 日 : コメントの募集期間 中 に PSC 文書を 公開 。
- 2008 年 6 月 22 ~ 27 日 : パリ会議 /PSC 会議 体系的な一連の質疑応答形式による 公開 協議 セッション。
- 2008 年 7 月 31 日 : 一般からのオンライン コメント募集期間の終了。
- 2008 年 8 ~ 9 月中旬 : これまで寄せられた募集コメントの PSC による 総括 / 分析 。移行アクション プランの改訂版の作成。
- 2008 年 9 月 7 日 : 2 回目のコメント募集期間。
- 2008 年 10 月 15 日 : 2 回目のコメント募集期間の終了。
- 2008 年 10 月中旬から下旬 : 募集コメントの PSC による総括 / 分析。最終的な移行アクション プランの作成。
- 2008 年 11 月の第 1 週 : ICANN 会議 /PSC 会議、最終文書に関する詳細な公開セッション。
- 2008 年 12 月 : 2009 年の導入マイルストーン を 含む 、 ICANN 理事会 への 最終文書の提出 と承認獲得 。
また、 PSC は対象地域 での対外活動に も従事 する予定です。
エキスパート諮問グループ
PSC は、「分析と設計」プロジェクトに 関する 協議を支援するための特別エキスパート諮問グループの形成を推奨します。
1評価プロセスの要約は、 http://www.icann.org/en/jpa/index.htm#submission を参照してください。